2007/5/3
San Pietro in Vincoli, Roma
写真は、サン・ピエトロ・イン・ヴィンコリという教会にある、ミケランジェロの彫刻「モーゼ像」。元々、この教会に立ち寄る予定はなかったのだが、ひょんなことから訪れることになった。
今回のローマへの旅は、1人旅でもあったし、ローマ自体観光地ということもあるので、さほど旅先で人と話したりすることはなかったのだが、その中の数少ない出会いのひとコマ。
コロッセオ近くの「ドムス・アウレア」の入り口近くで、地図案内板を見ていたときのこと。外国人の観光客とおぼしき老夫婦が地図を見ていたのだが、どうも現在位置がよくわかっていない様子。僕は、非常に土地勘のある人間で、たいていの場所は初めて行った場所でも、ほぼ迷うことがないという特技がある。そもそもローマを訪れるのは二度目であるし、ここがどこなのかはすぐわかったので、英語で現在位置を教えてあげた。すると、そのその地図を見ていたお爺さんが、ありがとうと言って立ち去ろうとしたその時に、何かを思い起こしたように、僕に向かって言うには、
「この奥に、すばらしいミケランジェロの彫刻がある教会がある。そこに行ったか?」
「いや、行ってません」
「絶対に見たほうがいい。本当に素晴らしいミケランジェロ(Great Micaerangelo)だったから」
「ありがとう。行ってみます」
というわけで、僕は予定外のサン・ピエトロ・イン・ヴィンコリ教会に行くこととなったわけだ。
ローマ観光としてはマイナーな教会だとは思うが、場所はコロッセオのすぐ脇あたり。しかも、本物の結構大きなミケランジェロの彫刻がある教会である。ミケランジェロといえば、ローマでは、サンピエトロ寺院にある「ピエタ」が有名だが、あのピエタはガラス越しに見るのみの存在。日本では当たり前かもしれないが、イタリアの美術品は、すぐに触れるくらいの身近な場所で見られるのが普通だし、それが魅力でもある。そんな中にあって、サンピエトロのピエタはやや得意な存在だ。
しかし、この教会のモーゼ像は違う。そもそもそれほど観光客が団体で押し寄せることもないし、いわゆるイタリアの教会の雰囲気をたっぷり残した教会である。しかも、そのスケールも非常に大きい。ピエタなんて目じゃない。これほど大きなミケランジェロの作品もそうはないのではないか。僕自身はミケランジェロの彫刻をきちんと愛でられるほどの美的センスもないわけだが、おそらくそのスケールの大きさから言えば、フィレンツェの有名なダヴィデ像と並ぶほどの作品であろう。きちんとミケランジェロを鑑賞したいのであれば、こちらの教会をオススメしたい。
なお、僕はかの老人が感動をしながら口にした「Great Micherangelo!」というセリフが、どうにも気に入ってしまって、そのほうが記憶に鮮明に残っている、。その時の様子からして、彼がこのモーゼ像に非常に感銘を受けたというのは間違いでないと思うが、もしかしたら「大きなミケランジェロがあった」と言ったのかもしれないと、今になって思う。英語もなかなか難しい。だけど、その老人がいなかったら、僕もこのGreat Micherangeloに出会うこともなかったのかと思ったら、これも1つの運命なのかなと思わないでもない。本来の旅のおもしろさというのは、こういう予想外の出来事だったりするのだが、今回の旅はある程度予定を立てていたし、初めての土地でもないし、イマイチこういう出会いや感動が少なかった気がする。そんな中にあって、この「Great Micherangelo!」は、数少ない旅の想い出になっている。